私の(メール)受信トレイに、未読のファイルが3件ある。
23日東京都内で朝日新聞の取材に応じた、今年1月まで文部科学事務次官だった前川喜平氏(62)が語った内容に関する反応・反響だ。(朝日デジタルからメールで入る。)
安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」が国家戦略特
区に獣医学部を新設する計画について、内閣府から文科省に「総理のご
意向」などと伝えられたと記された文書について、前川氏は自らが担当
課から説明を受けた際に示されたと証言。獣医学部の新設については、
加計学園を前提に検討が進んだとして、「行政がゆがめられた」。
25日に語ったことが、次の日にメールされている。
「黒を白にしろと言われる」。加計(かけ)学園の計画を巡る文部科
学省の文書が発覚して1週間あまり。同省の官僚トップだった前川喜平
前事務次官が公の場で舞台裏を証言した。冷静な口調で語ったのは、政
権中枢から感じた圧力と、いまの政策決定のあり方への疑問だった。
民進党が国会で示し、文科省に調査を求めたA4判8枚の文書につい
て「いずれも真正な本物」。文科省が「該当する文書の存在は確認でき
なかった」という調査結果を出したことに、「大変残念」「改めて調査
をすれば存在は分かることだと思う」と述べた。国会の証人喚問に応じ
るか尋ねられると、迷う様子もなく「あれば参ります」と返した。
菅官房長官は、「まったく当たらない」と反論。「国家戦略特区諮問
会議で決まったことを基に、内閣府が規制官庁と侃々諤々の大議論を行
うのは当たり前のことではないか。法律に基づいて行っていることで、
ゆがめられたということは全くない」と強調した。
3件目のメールは、会見前川前文部科学事務次官の証言が、霞が関の官僚たちにも衝撃を与えたという記事だ。事務方の元トップの告発は、現役官僚や元官僚の目にどう映ったのか。
前川氏は「(自分の発言で)文科省としては困っ
たことになると思う」と言った。役人の世界では
再就職先や現役に配慮して、古巣に不都合なこと
は言わないのが常識。「今までの官僚人生や人間
関係を切ってでも訴えたかったのだろう」とOB
はその覚悟を見る。
前川氏の言動をたたえる声は複数挙がった。
局長級だった国交省OBは現役時代、官邸に足し
げく通った。「官僚は
時の政権の使用人。有形無形の圧力に忖度(そんたく)しなくてはならな
い。その中で、当たり前の事実を顔を出して証言した。腹が据わって立
派だ」。外務省の50代の現役職員も「よほどの思いがあったのだろう」
と驚きを隠せない。事務方トップの事務次官は組織防衛を熟知しており
自分の発言が組織にどういう結果を生むか、わかっている筈だからだ。
ただ、前川氏が会見で「行政のあり方がゆがめられた」と話したこと
には否定的な見方も多い。
「許せない。ゆがめられたと感じたなら、止めないといけない」。国
交省の現役幹部は憤る。「仕事を全うできていなかったことを証明する
ような発言だ。全ての官僚が官邸の意向だけで動いていると思われると
迷惑だ」と話す。金融庁の40代の男性幹部も「なぜ辞任してから言うの
か。文科省に残っている部下が大変ではないか」と語った。
文書が公になって以降、安倍首相がコメントしていないことを問われる
と、「私はコメントする立場にない」とかわした。
一方で、いまの政権と行政の関係への疑問も口にした。「現在の文科省
は官邸、内閣官房、内閣府といった中枢からの意向、要請について逆らえ
ない状況がある」「政権中枢の力が強まっていることは事実だ」。
政権運営に不利な文書が露わになったので、その処
理・封じ込めで、うやむやにして流すことに終始する
だろう。国会での証人喚問も行われない雰囲気だ。
社会的に地位の高い立場にすり寄って、持ちつ持たれつの関係の中で、自らの希望や計画を実現させようという時代は終わりにした方がよい。